ちょっと一息”TAKE5”
ミニラボの個性派 ”一機当千”コラム
東京は北区田端駅の近く。
新幹線の走る土手沿いの路地に入ると、角にこじんまりした製作所がある。ガラス戸に、amandaとある。
手作りサイクルの名匠、千葉洋三氏の工房である。大きくはない。美麗でもない。
旋盤やフライス盤など、各種の工作機械が、所狭しと並んでいる。ここで、世界で初めてのカーボンフレームや、木製のリムを使ったコンプレッション・ホイールや、独自の銅板コンポジット・ホイールがここで産まれ、欧州の有力チームにも供給されてきた。
日曜日の午後である。機械にとりついているのは、千葉さんではない。
amandaでは、2020年前からこの工房を「ミニラボ」として開放している。自分で自分の自転車を創りたい、パーツを改造してみたい、何か手作りで冒険したい、といったサイクリストに、「ご自分でやんなさい」と、明け渡しているのだ。数人が、思い思いの工作に取り組んでいる。
バーナーが青い炎を上げた。まだ慣れない手つきでフレームの溶接に挑む者、木製のリムと軽量スチールの棒を組み合わせて、オリジナルの車輪を仕上げようとしている者。amandaミニラボの、いつもの光景である。
「左右の角度が何となく合わないなあ」と、小首をかしげながら計測を繰り返している人に、「あんまり、頭で悩まないで、どんどんやってみましょう」と、笑いながら声をかける。他の人も、つられて笑う。「デジタルより目分量だよ」と、誰かが言う。また笑い声。
なお、掲載のご希望あれば自薦他薦、お気軽にご相談ください千葉まで
*20240728
<ピンクのフォールディング24㌅>
2020年の11月、「私にも造れるかしら」とミニラボを訪ねてくれたのが、佐々木ゆうこさん。女性の参加は珍しくはないが、「シクロクロス用の27?フォールディング・バイクを自作したい」には、工房がちょっとどよめいた。半年かけて仕上がったのがピンクのバイク、2022のハンドメード・サイクルショーでは「いくらですか?」という見物客まで現れた。
Q 女性のサイクリストも増えていますが、シクロクロスもやる方は滅多にいません。自転車はいつから?
―― ここ10年ほどです。家族と北海道に行ったとき、美瑛町で「センチュリーライド(当時160KM)」というイベントをやっているポスターを見て、「ああ、私もやってみたい」と。阿佐ヶ谷のF商会で相談したら、「初めは」というので、クロスバイクを買いました。でも、なんかみんなと形が違う(笑い)。知人にアマンダを紹介されて、木リム、クロモリの、「みんなの乗ってる」型のハンドルをつけたシクロクロス用を、オーダーで千葉さんに作ってもらいました。
Q 走り回りました?
――美瑛町のロングライドや、長野の安曇野あたりとか。速さより、景色を愉しむタイプです。ただ、オフロードタイヤを付けると結構重いし、路線にもよるでしょうけれど、輪行で電車が混んだりすると「人に迷惑では」と気になって、気になって。縦にして運べばディレーラーが壊れやしないか、横にすれば人にぶつかるのでは、と。下を向いて、じっと我慢、「私は貝になりたい」でした(笑い)。
自転車を交通機関に持ち込むのが普通になったのは、ここ数年のこと。レーサーパンツのまま、むしろ誇らしげに持ち込む人も増えたが佐々木さんは、勤め人の乗客が多い路線ではやはり気が引けるのだ。
Q そこでフォールディングを? 手元のミニラボ記録では、2020年11月23日に現れ、2021年6月に完成、となっていますが、折りたたみはなかなか難しかったのでは?
――メーンがシクロクロスですから、BBを普通のより高く設計したんです。でも、造り始めたら27? でもどうも高すぎる、千葉さん困ったわと相談したら、あっさりと「なら24?にすればいいでしょう」。「ああ、そうですか、それならそうしましょう」と(笑い)。ディスクホールも付けて下さいました。
仕上がった24?は、シートチューブのところでぐるっと回転する。簡単そうな仕掛けだが、かなりの精度が要求される作業だった。ミスは他にもあったが、「人生、アバウトがいいのよ」と笑いながら、さっさと修正して前に進む。
マシンは折れるが自分は折れない。
中味は不屈。北海道のセンチュリー・ライドはすでに出場8回を数えるが、初挑戦のときは、事前に神宮外苑での周回練習を重ねたそうだ。ミニラボでマシンを造る、自分でも自分自身を創り上げていく。
Q それで、実際の使い心地はどうですか? 軽いし、他人を気にせず、堂々と運べるでしょう。
――それが。コロナを機に、私、車を買っちゃったのよ。茨城のりんりんロードとか。あちこち走りに行くし、美瑛やシクロクロス、MTBのイベントにも、年に合計5回ぐらいは出てます。でも、もう電車に乗る必要がなくなって(笑い)、ゴメンナサイねえ、せっかく聞いて下さったのに。
(なんか、こちらが折りたたまれた感じ)いえいえ、そのアバウトがいいのです。ちなみに、クロモリロードが他に2台。27?オリジナルホールも、そちらに掃かせているそうだ。選択肢が多ければ多いほど、人生、自由に遊べるらしい。
6月の日曜日の午後だった。東京・田端のアマンダにランドナーが到着した。前後にバッグ、太いタイヤ。神戸から漕いできた美籏應登(みはた・まさと)さん、25歳。元シマノのエンジニアである。フレームには、地元Rokko(六甲)のデカールが。
Q お疲れでしょう、ルートは? ――滋賀から大垣、知り合いのshin服部製作所に寄ったりして、大垣まで中山道、岡崎から東海道。交通量が多くてさすがにドキドキもしましたが、箱根の下りは愉しかったですね。もっとも、漕いできたのはこれが初めてでも、これの製作で、8回、大阪=ミニラボを往復してるんです。
Q 8回! その熱意と根気は、ミニラボのギネス記録です。今回は、言ってみればRokko号の里帰りになりましたね。ところで、そもそものきっかけは?――将来ビルダーになりたくて、そのためにどんな知識、技術が必要かを知るために、まずは1台でいいのでフレームを自作してみたかった。ただ作る環境がなくて悩んでいた折に、2023年のハンドメイドバイシクル展でミニラボのチラシを渡され決心がつきました。
夜行バスで往復しながら、通算10か月、正味75時間。クロモリ・フレームから手作りだが、よく拝見すると、この方の個性が各所にじみ出ている。フォーク・クラウンなどは、クラシックな工芸品の香りがする。
Q かなり凝ってます。難しかったでしょう? ――BIKE CADと言うソフトで設計しましたが、トップチューブのサイズを間違えてカットしてやり直したり、 “愉しい想い出”が、たくさん(笑い)。パーツまであれこれ自作する余裕はないので、バッグのステーもシートピラーも市販品。シートチューブの内径と市販のピラーの径が微妙に合わなかったので、市販品のキャリアをストッパー代わりにしたりと工夫しました。ギアは前が48×42×34、後ろが8段のSORAです.
――手先が不器用なこともあって、ロウ付けはなかなか綺麗にできず。人に見せるのも恥ずかしい外観ですが、あえてそのままの状態を見せようということで、塗装はクリアのみにしました。千葉さんや安堵さんからは反対されましたけど(笑)
Q 失礼ですが、シマノ出身ですよね?デュラとか、高級品を使うのかと、、。 ――あまりお金もかけれなかったので、メルカリで買った3万円の中古ランドナーの部品を流用したんです(笑い)。タイヤは26インチ、35Cです。
ハイエンド、019のクロモリ。自然色で、実に綺麗な仕上がりだ。
Q 乗り始めは? ――中学の頃は折りたたみに乗ってましたが、神戸高専で自転車部に。ただ、レースで他人と競ったりするより、自由気ままにマイペースで走り続ける方が好きになって。自転車だと“自分だけの力で何か出来る”、と言う点に惹かれました。
瀬戸内海一周、神戸からしまなみ海道、香川・高松と、500KMの旅。地元六甲山では、平均斜度8%の10KMを一気。シマノでは釣り具担当の仕事が主だったが、650Cのグラベルで走り回る同氏を、職場の同僚たちは(おもしろがって?)応援したそうだ。長距離での実走は平均時速25KMとか。
Q 他のスポーツもおやりに? 半端ない体力ですね。――長距離ランと平行して、山を走り抜けるトレラン(トレールラニング)にも出ています。100kmを超えるレースに出たり、日本海から上高地まで3日間で縦走したりとか。社会人になってからの週末はほぼ六甲山で走りまわっていました。
確かに。極限近くまで絞った体は、サイクルショップよりも、縦走コースで見かける山岳レーサーのそれだ。強固な意志と、冷静な判断力が要求されるトレランも、長距離ライド同様、過酷で孤独な冒険である。
Q 登山も昔から? ――六甲育ちで、よく裏山を登ってましたから。5月でシマノを退社、この夏は北アルプスの双六岳の山小屋の仕事をやります。
ともに播隆和尚が切り開いた笠ヶ岳と槍ヶ岳の間を抜けて、黒部五郎岳へと続く北アルプスの奥深く、名峰双六岳(2860M=上宝村)がそびえ立つ。山小屋仕事は4か月。山を下りたら、またあちこち走り回るに違いない。「あれっ?!」と、どこかで出会うような気がしてならない。
*20240616
快走数学者の四つ股?フォーク
アマンダのミニラボには、時折、変な人がやってくる。坂本聡さん(55)は「フロントフォークは、真っ直ぐがいいか、曲がっているのがいいか」を体験立証したいと考え、、2種類のスチールフォークの製作に取り組んでいる。逗子在住、仕事はIT関係。二股、いや“四つ股”の試みを聞いて、仲間は一瞬、「えっ、なんで?」と不審な顔をする。
Q まずサイクル歴を教えて下さい。いつごろから自転車に?
Q 一気にはまりましたか?
このお方、実は明治大学、数学の博士課程出身。ぼさぼさの髪、印象と頭の中身はかなり違う(笑い)。しかも、オールドファンが喜びそうな話を、よくご存じである。
Q アマンダとの出会いは?
さらに2023年のハンドメイドサイクルショーで、清清水さんの自作の自転車やホイールを見て、ミニラボで清水さんや、ユニコーンでも有名な石橋さんにさらに詳しく話を聞いたりして、、、。ちなみに清水さんのは前輪は手組のアンブロシオ・リムのホイールで、後輪が自作の木製ディスク。清水さんの自転車の隣にあった確か山口さんの自作の自転車がジョバンニ木製リムのクロモリバトンでした
ミニラボとは、そういう所だ。互いの作品や挑戦が、新たな展開に結びついていく。「走る時は1人が好きですが、仲間とあれこれ自転車の話をするのがとても愉快」と言う。2023年夏、木リムの前輪とフレームを作ることに決めた。リムは定番のイタリア・ジョバンニだが、千葉さんにそそのかされて? 珍しいカーボン製のハブを創った。「ルーティンワーク」の枠に収まるのが、嫌いらしい。
Q 素直じゃないって、子どもの頃から言われてきました(笑い)? ――よく知ってますね(笑い)。通常9本の腕で創るらしいんですが、私は8本で、その代わり一列ではなく、1CMずつ左右交互にオフセットして。
Q なぜ曲げたFフォークを? ――往年のデ・ローザの、先端を美しく曲げた物に心轢かれていました。それをイメージしたんです。でも、今はみなフォークをストレート。「う~ん」と迷っていたら、千葉さんが「スレートの方が少しいいかも。しかし両方創ってみれば納得がいくだろう。ここではそういう事が出来るんだから」と。確かに、両方を提供するショップはないですから。
Q 基本スペックは?
目下、作業中。何度も、エンド部分を熱しては、微調整している。独特のこだわり。
Q細部にまでこだわるのは? ――走る部分の美学というか。自分が自転車に乗っているという意識を忘れてしまうような、そういう付き合いをしたいからなんです。
本能のままに、人とマシンが一体化して、どこまでも地平線を目指していく。走る数学者、なかなかの哲学者でもある。
*20240527 <<ユニコ-ンとシングル、独自の走り>>
木製リムが緑色に塗装してある。色鮮やかなマシンだ。
アマンダ・ミニラボの常連、石橋和博さん(52)が、一から十まで、すべて自作した。個性豊かな愛車である。最大の特徴は、ハンドルから付き出した、一本棒。
Q 率直にお聞きします、この仕掛けは、何?
Q 言われてみれば、「ああ、そうかな」とも思うのですが、左右のバランスがとれるんですか?
ユニコーン、別名一角獣。ギリシャ神話に登場する、ヤギに似た動物だが、一本の強く長い角を持ち、尾はライオンだ。闘うときは象をも倒すと言われ、一方で水を浄化する能録も持つ。誇り高く、夢とロマンに満ちた生き物である。
ハンドルだけでなく、独自の夢を追い追い続けた石橋さんのオリジナル車に、何か通じるものを感じてならない。
Q フレームからの設計・製作ですよね。シングル・ギアというのがまた興味深いです。怖くないですか。
Q 木製リムも凝ってますね
Q自作のきっかけは? ――雑誌を見て、ミニラボのことを知り、自分に特化した自転車欲しくなったんです。ただ、家内の承認がなかなか得られない。そこで作戦を立て、まず17歳の息子を「モノづくり教育」の一環としてミニラボに送り込みました。これは家内も賛成です。なにせ教育ですから。
Q自転車歴は長いんですか?
奥深い山に入り込んで、一人得意になっていると、大きな送電線の鉄塔に出くわすことがある。こんな所にくるのは自分だけかと思うが、鉄塔の近くに必ず踏み跡を見つける。送電線の仕事をする人たちである。かすかな跡だが、そこに力強い“人の力”を感じる。石橋さんは、建設関係、送電線の仕事をしている。
出張が多く、十分な休日が取れないことが多いが、息子さんと一緒に走るのを愉しみにしている。「代々木公園とか荒川サイクリングロードによく行きます。家内ですか?もちろん仲良く走ってますよ!」
*20240512<<湘南の風を 親子タンデムで
アマンダ・ミニラボでも、タンデム製作は珍しいが、藤村薫さんは「娘と一緒に乗れるように」と、フレーム設計から始めて、「親子タンデム車」を手作りした。
Q なぜタンデムを?
タンデム車の歴史は古い。アマンダの千葉洋三夫妻もオリジナルで製作し、愉しんだ事があるという。「驚くほど軽快で、東海道走っていたプロの競輪選手をあっさり抜いた事もあるし、上り坂も信じられないほど軽かったよ」と、千葉さんも語る。
Q それでご自分で設計して?
Q 製作自体は経験が? ――アマンダのミニラボで、これが3台目。2020年頃から、スチールで一台造り、次に家内用の、前三角がカーボン、後ろがスチールのオリジナルを造ってみた。ところが、家内は少しも喜んでくれない、乗ってくれない。でも、自分で何か創るのが面白くて、気にはしてませんけど(笑い)。
午前5時。静まりかえった鎌倉市、一軒のガレージに灯りがともる。藤村さん(53)が作業を始める。せっかくの休日だが「娘が起きてきたら、一緒に遊びたい。だから」。その前に、バイスでスチールのパイプを加工し、自分の、いや自分たち親子の為のオリジナル車を製作したのである。
2024年2月のハンドメード・サイクルショーにアマンダから出品。人だかりが出来た。。前後ともホイールは20インチで、前は53歯、シングル。後ろはフラットハンドルで、12-28。
Q 実際に乗って、娘さんは?
親と子。公園に行けば、息子と野球やサッカーをやる内に、つい“教え魔”と化して怒鳴つたりする親もいる。「一緒に遊ぶ」のは、なかなか難しいのである。ましてや父と娘。オリジナルのマシンも魅力だが、前と後ろ、その絆を「手作り」したのが。もっと素晴らしい。別にサイクリストに育てようというのではない。ただ、一緒に風を切って走りたい、それだけだ。けだし、親に出来るのは、いい環境を与えることなのだろう。自然に、己の本能を活かして成長出来るような環境だ。
Q ご自信のサイクル歴は?
身長178CM。柔和だが、乗ったら怖いタイプの、強者(つわもの)である。実は聞き手も西湖のレースの試走役をしたことがあり、当時のださいトレパン姿で、2周32分ぐらいだった。対岸では向かい風が強く、路面も当時から荒れていた。藤村さんは26分台だったと記憶している)
Q 親子タンデム、奥様も喜んで? ――家内はいいとも悪いとも、何も言いません(笑い)。作業でも失敗がありましたが、最近も計算外のことが、、。娘の成長が早くて、半年前に造ったのに、もうサイズが合わないんです。シートを後ろに下げても限界で。仕方なく、シートポストを加工して。
愉快そうに、アマンダの工房で、またオリジナルのポストを作り始めた。やがて、娘さんが「あたしが前に乗る!」という日が来るに違いない
*20240427<<自然発生型オールラウンダー>>
奇妙なハンドル形状である。フレームも独特。帆布のバニアが、これも自作らしい、前後にぴたり付いている。太いタイヤは26インチ。人目を引く。最近は「地道も走れる27インチロード」がちょっとしたブームだが、それとは違う。この自転車は、「アウトドア向き」に造られたのではなく、アウトドアそのものから産まれた逸品である。ミニラボで製作したのは、川口真平さん(41)、音響技師。
Q ユニークですね。 ――私はアウトドアが好きで、あちこち放浪を(笑い)。特に島を回るのが気持ちいいんです。そういう自分のサイクルライフの一部分に、ストレス無く入り込んでくれる1台が欲しくなって、2022年頃、アマンダのHPを見て、千葉さんに会いに行ったんです。
以前は登山も趣味。12年ほど前からサーリーのクロスバイクに乗り始めたが、友人と(目黒から)富士山へ行ったのが、自作への一つのきっかけになったそうだ。
――150KMも走ったのはその時が始めて。脚が痛くて、頭痛薬のバッファリンが痛み止めに効くかと大量摂取して(笑い)。でも、夜出発して、田貫湖でキャンプして、輪行で還ってきた体験が、大きな刺激になりました。それからサイクルでの旅が愉しくなって。
Q 普通のロードでは、ご自分のサイクルライフに合わない?
Q バッグも自作で
自分の外側からやってくる情報に自分のスタイルを合わせるのではない。自分の内側からあふれ出るアウトドア本能を大切にする。その内側の世界から、本能のままに外側世界に生みだされたのが、この自然発生型オールラウンダー車だ。
Q ハンドルの使い方もご自分のアウトドア仕様
Q なぜ島がお好きに?
多忙な仕事の合間に、2、3日の休暇をこじ開ける。竹芝桟橋まで自走して、多くは夜行の船で、島へ行く。世が明ければ、いつもとは別の世界が開けている。日常の常識や価値観を断ち切ってします。何がしたいか、脚が自分で選択する。そのままに、走る。ハンモックで寝る。
――造って良かったです。作業での失敗もあれこれありました。それもまた、今となっては愉しい体験です。その内、家内用のオールラウンダーを造ります。またミニラボに通います。
*20240310<<竹の六角フレームで?!>>
清水翔太さんは、竹で自転車を創ろうとしている。
Q 竹でと聞くと、太い竹を3本組み合わせて前三角を造るのかと、普通は思 いますね。。
――それも考えました。でも、それだけじゃあ何か物足りないと思って。
Q 六角形のフレーム材ですね、これは世界初、大変な発明!
――簡単に言えば。割り竹を6本、60度角で、六角形に組んだものです。1辺が20mm。エポキシで相互の面を接着。組み上がりは直径40mmにもたらないくらいの六角棒です。
Q 大変な作業だったでしょう
――作業より、これだ、と思いつくまでが長かったです。実はamanndaに来始めた頃から、竹を使おうという漠然とした気持ちが頭の中にあって。単体の竹でも試してみましけど、ずいぶん悩みましたが、あるときふっと、ひらめいたんです。子どもの頃、父親が渓流釣りをやっていて、竹竿の自作の本が本棚にあった。竹を三角形に組んで造る、珍しいもので、工芸品のように美しかった。子ども心に、こんなのが自作できるのかと、衝撃を受けたことがあります。それをふっと思い出して。
Q しかし、竹と言っても種類は多い。特殊な竹を使う必要がある?
――特産品を? いえ、2万円の特売品です(笑い)。長さ180cmの割り竹、ただし48本まとめないと売ってくれなかった。仕事は医療器具関係。目下は一人暮らし。
Q 割り竹の加工は夜?
――はい、部屋でね。ミニテーブルソーを買い込み、やすりやかんなや切り出しナイフ、やすりで材をそろえました。ただ、両端はフレームパーツに合うように、内側をくり抜かなければならない。このくり抜きは、amandaの機械で、安堵主任に手伝ってもらわないとないと出来なかったですね」
Q 実に美事で、頑丈そうですが、ミニラボ仲間の反応は?
――強いねじれの負荷がかかったときにどうなるか、は未確定。外側にカーボンを巻けばいい、いやそれじゃあ竹が見えない、竹細工の意味がない、麻糸で縛ったらいいだろうとか。けっこうイジラレてますよ、他人ごとだと思って(笑い)
Qミニラボはいつから?
――4年前、開設当初からかな。製作はこれが4台目です。初めは普通の700Cのオリジナルの頑丈なスチールフレームのロードで、コンポジットの後輪も造り、使っています。次に700cの折りたたみ。3台目は、最初の700CをもっとT軽量に仕上げたロード。自分にも独自の自転車が造れることが分かってくると、ただの手作りから、ちょっとずつ冒険志向の度合いが大きくなって
Qしかし、よくこんな馬鹿な(失礼)ことをやろうと決心しましたね。
ちなみに、カーボンをサイクルに採り入れたのは、千葉さんが世界で初めてだった。80年代、東レをはじめ、大手メーカーが話を聞きに来て、開発に協力した。今も最先端の位置に、カーボンはいる。その最強軍に、若武者が竹槍で挑む。黒澤明の白黒映画を思い出す。しかも、カーボンの生まれ故郷のamandaから、挑みかける。
Q サイクリスト歴は長いんですか?
――実は、ミニラボに来るまでは、乗ってなかったんです。ただ「ものつくり」が好きで、折り紙も得意だった。故郷の神戸から東京へ転勤になって、「何か面白いことやってみようかな」と、ハンドメイド・サイクルショーを覗いたのがきっかけに。
Q 製作実作業期間は?
――約半年ですね。また転勤もあるので、6月までには乗れるようにと思ってます。後ろ三角もスチールで自作中ですが、毎週は来れないので、どうなるか。ねじれ強度も不確定だし。でも、不確定だからこそ、面白いんです
Q 失敗も?
――トップチューブとダウンチューブを勘違いして、せっかく創ったのに短く切断してしまったり。そのときは頭が真っ白に。作り直しです。
しかし、ミニラボではある意味で日常茶飯事である。あ、やっちゃった、の叫び声が響くと、みな同情し、みな大喜びする。
ミニラボ、万歳である。
ちなみに、この清水さんの挑戦は、その後多くのサイクリストやミニラボ仲間に影響を与えた。”元祖ミニラボ”の1人である。
end